クマ子の小説風ブログ:西印旛沼一周で見えた驕りと反省

語る

私の名前は熊田久真子(クマダ クマコ)。
クマった商事の広報担当として働いている、パスタと鮭と、ちょっとお酒が大好きな普通の女子だ。

私の業務は社外へのPR活動に関する資料作成や、自社WEBサイトに掲載する記事の企画からそれに関わる社内部署や業者との各種調整などだ。

普段はデスクに向かう日々だが、休日は自然との対話を求め冒険に出ることが多い。

今回は千葉県にある秘境、西印旛沼へ向かうことにした。
目標はただ一つ、沼を一周することだ。

印旛沼はかつてW字型の広大な沼だったが、戦後の干拓により北印旛沼と西印旛沼に分割され、面積は大きく減少してしまったらしい。

私は印旛沼を攻略するにあたり、まずは西印旛沼を、そして翌週には北印旛沼を一周するつもりだ。私はこれまで、沼と戦って負け知らずの沼ガールなのだ。

「今日は絶対に西印旛沼を一周してやる!」と意気込んで京成臼井駅に降り立った。西印旛沼はこれまでの沼よりも規模が大きく、一周は時間との戦いになる。

私は電車に乗る前に地元で食事を済ませ、電車の中では体を休める名目で居眠りをしていた。しかし、ここまで連戦連勝で来た自信が驕りとなっていることに、この時点ではまだ気づいていなかった。

「とにかく一周するんだ、それだけが目標だ」と自分に言い聞かせ、沼へ最短ルートの道を進んだ。

沼の探索も最初は順調だった。木々に覆われた遊歩道を進み、沼の景色を楽しむ。「遊歩道も整備されているし、このままトップスピードで突き進めば余裕だろう」と思いながら足を進めた。

しかし、不意に「佐倉ラベンダーランド」という幟を見かけ、こんな場所にあったのかと驚いた。

実は、行きの電車の中でGoogleマップを見て一瞬気づいたが、私はすぐに寝落ちてしまっていたのだ。偶然見つけたその場所で、私は準備不足を痛感した。

沼を一周するという自分の目標と、沼周辺を紹介するという企画としての事情に挟まれ、正直言うと仕方なく立ち寄った感のある佐倉ラベンダーランド。

しかし、私は美しい花々と歌声に思わず引き込まれそうになった。沼一周など、どうでもよくなりそうになっている自分を必死に押し殺していた。

結局、私は沼一周を優先するために、すぐにそこを立ち去った。
自分の感情と行動に若干の違和感を感じながら。

北岸では、歩道がないのに交通量の多い道を10kmも歩くことになった。道路状況は決して良くはないが、この沼周辺は未舗装区間は少ない。

新調したばかりのトレッキングシューズが、逆に足に負担をかけ始めた。
「なんでこんな靴履いてきちゃったんだろう。平坦な道ならスニーカーの方が良かったのに」

沼の景色も見えず、ただひたすら危険な道を歩くことにイライラが募った。
「いったい何をしに来たんだろう…こんな沼、もう二度と来るものか!」

途中で見つけた湧水スポットで少し休憩を取るも、再び続く足場の悪い道に疲労と怒りが増していった。「もう限界…でも諦めるわけにはいかない」と自分に言い聞かせ、私は進み続けた。

やっとのことで飯野竜神橋に到着すると、目の前に広がる絶景に心が癒された。
「こんなに美しい景色があったんだ…今日一日の努力が報われた気がする」

その瞬間、自分の驕りと準備不足を反省する気持ちが湧いてきた。

私は今日の大半の時間を、沼の見えない道を進むことに費やしていた。私はその間ずっとイライラしていた。しかし、ここにはこんなに素晴らしい景色が広がっている。

遊覧船やオランダ風車、物産品を扱うショップやきれいな花畑。ここを紹介せずに、いったい私は何をしに来たのだろうと自問した。

「今までの自分の行動を振り返り、次の冒険ではもっとしっかりと計画を立てよう。自然との対話を楽しむためには、もっと慎重に準備をする必要がある」と心に誓った。

私は痛めた足を休めることを優先し、来週には北印旛沼も制圧しようという計画を一旦見直すことにした。

帰宅後、いつもなら行きつけのクマスターの店に立ち寄るが、今日はそんな気力も体力も残っていなかった。

靴を脱ぎ捨て、重い足取りで自分の部屋に入ると、私はそのまま床に倒れ込んだ。心の中に渦巻く失望感と疲労感が一気に押し寄せてきた。

「もう、何やってんだろう…」そうつぶやきながら、汗でべたつく身体に不快感を覚えた。気を取り直してお風呂場へ向かい、シャワーを浴びた。

温かいお湯が疲れた身体をほぐし、汗と一緒に今日の失敗も洗い流してくれるようだった。

お風呂から上がると少しは気分も晴れた気がしたが、それでも心の中に残るモヤモヤは消えなかった。冷蔵庫から取り出した缶ビールのプルタブを引き、無造作に口に運んだ。

冷たいビールが喉を通る感触は心地よかったが、それだけでは満たされない、何かが心の中に残っていた。

机の上には、まだ封を切っていないウイスキーのボトルがあった。

今日は特別だ、と自分に言い訳をしながらグラスに注ぎ、強く一口飲んだ。アルコールが身体を温めると同時に、今日一日の出来事が頭の中を駆け巡った。

「沼一周なんて無謀だったのかな…いや、もっとちゃんと準備していれば…」そんな思いが浮かんでは消え、自己嫌悪が募る。

ふと、佐倉ラベンダーランドの美しい花々や、飯野竜神橋から見た絶景が思い出されたが、それもまた虚しさを増すだけだった。

「次は…もっとちゃんと計画しよう」そう誓ってみても、今はただ、その言葉が空虚に響くだけだった。もう一口ウイスキーを飲み干し、私はソファに倒れ込んだ。

「今日はもう、何も考えたくない…」そうつぶやきながら、私はそのまま眠りに落ちた。

そして私は、また明日を迎える。

こうしてクマ子の「沼った生活」も続いていく。明日も、そしてこれからも。

 


語る
スポンサーリンク
クマゴロさんのクマった生活

コメント

タイトルとURLをコピーしました